2017-05

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「デフレの正体」 藻谷浩介 著

角川oneテーマ21 2010年6月10日 初版発行
2014年8月4日読了

なんとなく見ていたNHKのビジネス関係の番組で、ゲストの一人が発したコメント「経済の目的は金儲けではなく、『継続』です」が心に響き、ウェブで検索したところ、それが藻谷浩介氏だということが分かった。氏の著書で、4年ほど前にベストセラーになった「デフレの正体」を読んだ。検索の過程で、著者が、2011年9月に、本書を批判したブログへの書き込みに関して、ブログの書き手から人権侵害を理由とする損害賠償請求の民事訴訟を起こされ、札幌地裁から10万円の賠償命令を受けたことも分かったが、とにかく読んでみた。

読んでよかった。

日本経済の低迷の原因は、最も消費意欲の旺盛な生産年齢層(15歳~64歳)の人口減少による内需の縮小のため、と分析し、日本経済再生への対応策として1.高齢富裕者層から若者への所得移転、2.女性の就労と経営参加、3.外国人観光客・短期定住客の受入、の3つを挙げ、それぞれに具体的な実行案を提示している。
論旨が明快で、読みながらいろいろと考えるきっかけを与えてくれる良書だと思う。

読後、気にかかっていた訴訟のことをやや詳しく調べてみた。(こんな時、ネットは本当に便利だ。)
原告は、「高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学」(河出書房新社)の著者で同名のブログも展開している菅原晃氏だ。菅原氏がそのブログ上で、本書を批判したところ、藻谷氏が当該ブログのコメント欄に以下の書き込みをし、この文章が菅原氏への人権侵害となるかが争点となった。やや長くなるが全文を引用する。

「そんなことはわかってますが
わかってますよ。ですが、対外債権が積みあがっていることすら知らない人が余りに多いので、このように書いているのです。問題は内需が減少する一方のために、対外債権が幾ら積みあがろうと国内投資も増えないということですよね。その原因は、あなた方の言っているコンベンショナルなマクロ経済学で解けるのですか? 日銀がインフレ誘導すれば内需は増加すると? あなたは、7章と8章をどう読んだのか? そんなことはとっくに知ってたのですか? 三面等価なんて、資産が腐る世界では意味がない、そのことをわかって使っていますか? 「自分は経済学を知っている、こいつは勉強していない」、そんなつまらない矮小なプライドでモノをいうなってんですよ。経済学なんてどうでもいいのです。枠組みはどうでもいい。対外資産が積みあがるだけで何の役にも立たない、なんて老人の繰言を言うな! なんとかしようと考えないのか? あんたみたいなあたまでっかちしかいなくなったから、自慢できることが実践ではなくて理論だけだから、日本はだめになるのだ。くやしかったら、自分の実践を少しでも語ってみろ。対外資産の増加を国内に少しでも還元する努力をしてみろ。そうでなければ外国に引っ越せ。あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。そういうことです。
言い直します。それだけ理解力があるのであれば、実践力もあるはずだ。早く正道に戻ってください。
2010/07/16 01:24」

藻谷氏の上記コメントは、菅原氏が初めて同書の批判を行ったブログ上でのみなされ、その後は、このコメントについて、もっぱら菅原氏が、藻谷氏の経済理論の理解不足という点を、詳細に、20回に亘って行ってブログ上で論証した。全て読んでみたが、菅原氏の批判は、藻谷氏が使用する経済学用語、たとえば「付加価値」や「貿易黒字を稼ぐ」や「貯蓄を消費に回す」といった言葉が適切に使われていない、これは、藻谷氏が経済学の初歩を知らないからだ、という趣旨のものが中心だ。

菅原氏の批判文は、先生が生徒の書いた答案に、赤ペンで事細かに訂正を入れている、といった体のものだ。所詮、先生-生徒という閉鎖的な関係の中でのみ例外的に成立するような類のコミュニケーションにすぎず、その批判が、何らかの有意義な成果物を生み出すきっかけとなるとは思えない。内に籠る批判、間違いを指摘するためだけの批判とでも言おうか。

一方、藻谷氏の著書「デフレの正体」は建設的な提言の書で、菅原氏の文章とは対照的に爽快な読後感がある。確かに、上記の藻谷氏のコメントには乱暴な言い回しが含まれており、読んでいて気持ちのいい文章ではない。しかし、藻谷氏の著書自体は、日本経済の将来像など様々なことを考えるきっかけを与えてくれる、という点で、菅原氏の批判文に比べて圧倒的に面白い。

ネットのおかげで、その本だけでなく、それに対する批判文も併せて読んで考える、という今までにない新しい方法で読書を楽しむことができた。
スポンサーサイト

コメント

Re: タイトルなし

コメントをいただきありがとうございました。
気に食わないとすぐに訴訟、なんていう社会にはなってほしくないものですね。

記事読ませて頂きました。藻谷さんの訴訟の件は、こういった経緯だったのですね。ブログの書き込みくらいで訴訟を起こされるとは、自分も注意しなきゃいけないと思いました。本の批判はほどほどにします。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://runusa.blog119.fc2.com/tb.php/16-f0545d14
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

プロフィール

内之助

Author:内之助
マラソンは、2008年12月のホノルル・マラソンをもって、全米全州(50州+DC)でフル・マラソンを夫婦で完走。今は、トレイルでのウルトラ・マラソンを楽しんでいる。
音楽は、中学校1年生の時に、FMで偶然耳にしたモーツァルトの喜遊曲がきっかけでクラシックにのめり込む。
読書は、ノンフィクション中心に、同じ著者のものをまとめて読む傾向あり。小林秀雄、吉田秀和、カール・ヒルティ、スティーヴン・ジェイ・グールド、内田樹、茂木健一郎など。
仕事はサラリーマン。1995年以来ニューヨーク市郊外在住。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ようこそ

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。