2014-11

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ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61

中学三年生の時に、たまたま耳にして以来、今に至るまでずっと好んで聴いている曲だ。全曲で演奏時間は45分前後と長めだが、ベートーヴェンの曲にしては珍しく、あまり緊張感を強要しない曲風なので、気軽に何度でも聴きたくなる。

第一楽章は、ティンパニが、ニ音(ニ長調のド)の四分音符を四つ連打するという、この上なくシンプルな始まり方をする。この同音四連の音型が、20分を超える長い第一楽章のいたるところで顔を出す。こんな単純な音型なのに、出て来るたびに違って聞こえるだけでなく、曲そのものがその都度精彩を増して行く。第一楽章の主要主題は、これもまた単純な、ドーミソラシドレドシというほとんど音階そのもののような短く簡明なものだ。ゆったりとした風格を感じさせてくれるこの主題が、この曲全体の中で、最も好きなフレーズだ。

心地よいまどろみのような第二楽章も、穏やかな快活さを感じさせる第三楽章も、どちらも好ましい。

そもそも、穏健で、あまり声高に主張しない曲風のせいか、大抵の演奏が中道を行くような常識的な感じのものになるが、むしろその方がこの曲の良さをよく伝えてくれる。好きな曲なのでいろいろな録音を聴いてきたが、結局は、一番最初に買った同曲の録音(当時はLP)である、シェリングの独奏にイッセルシュテット指揮ロンドン交響楽団が伴奏したものが、今でも最も親しみやすい。
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『道楽と職業』夏目漱石 (講談社学術文庫 『私の個人主義』1978年 所収)

道楽とは自分のためにするもので、職業とは他人のためにするもの。
漱石45歳時の明治44年8月、兵庫県明石での講演の中で述べられた、この単純明快な職業観が、僕にとって、仕事をする中で経験する様々な困難さと向き合い、不条理さと折り合いをつけるための貴重な助言となっている。

言うまでもなく、世の中は、持ちつ持たれつで成り立っている。自分で作れないものは、他人が作ったものをいただくし、他人が必要としているものを自分が余分に作った場合は、それを他人に譲る。「いただいた」り、「譲った」りは、資本主義経済の中では、通常、「買った」り、「売った」り、という形で行われる。他人が自分に対して、これを作ってほしい、これを代わりにやってほしい、と言ってきたとき、それが自分の職業になる。

このように、職業とは、あくまでも、他人主導で始まり、他人主導ですすめられるものなのだ。つまり、職業は、自分のためではなく、人のためにするもの、ということになる。ただし、「人のためにする」といっても、「人を教育するとか導くとか精神的にまた道義的に働きかけてその人のためになるという事だと解釈されるとちょっと困るのです。」と、漱石は急いで但し書きを加える。「人のためにというのは、(中略)人の御機嫌を取ればというくらいの事に過ぎんのです。」

なるほど、仕事とは、あくまでも他人主導のもので、自分のコントロール下にはないもの。それだからこそ、仕事は簡単ではないし、不本意な時に、不本意なことを、不本意なやり方でやらなければならないことが多い。したがって、仕事にストレスは付き物だが、だからといって、仕事というものは、世の中の持ちつ持たれつという仕組みそのものを形作っているものである以上、とてつもなく困難なものでもないはずだ。「人の御機嫌を取る」、これが、仕事をする時の基本的な心構えのようだ。

よく聞く「やり甲斐のある仕事」「自分にピッタリの仕事」という考え方も幻想にすぎない。仕事とは、そもそも楽しいはずがない。仕事が、自分の思ったように進まなかったり、難しく感じるのは、当然のことなのだ。何かとても吹っ切れた気持ちになれた。「やり甲斐のある仕事」がこの世のどこかにあるのではなく、人に頼まれて始めた「何か」を継続しているうちに「やり甲斐」を感じるようになって、その「何か」が「やり甲斐のある仕事」になる、という順序で展開する。

こう考えると、たとえば、部下は上司を選べない、という不条理も納得しやすくなる。上司の下で仕事をするということは、上司という他人のために、上司が僕にやってほしいことをやることなのだから、端から自分には主導権はなくて当然だ。顧客からの理不尽な要求も、程度問題だが、主導権が顧客にある以上、ある程度は飲まなければならない、問題は、それをどうすればうまくできるか、それを考えることこそが、自分の仕事だ。仕事をする中で経験する様々な不合理さが、「他人のため」というキーワードで、かなりの程度まで心情的に納得できるようになった。

ところが、さすがに、現実はそれほど単純明快には出来上がっていない。実際に仕事をしていく中では、さらに個別具体的な問題が日々発生し、対応を迫られる。たとえば、
仕事が、あまりに忙しくなり過ぎたときにどうすればよいか?
仕事が過剰にならないように、事前に何かできる手立てがあるか?
顧客からの理不尽な要求にはどう対処すればよいか?
部下のモチベーションをどうやって向上させるか?
難しい上司とどう接していくか?
他の部署との協力関係をどうやって築くか?

などなど、仕事をしていくうえで頭を悩ませることは尽きない。まだ先は長い。

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プロフィール

内之助

Author:内之助
マラソンは、2008年12月のホノルル・マラソンをもって、全米全州(50州+DC)でフル・マラソンを夫婦で完走。今は、トレイルでのウルトラ・マラソンを楽しんでいる。
音楽は、中学校1年生の時に、FMで偶然耳にしたモーツァルトの喜遊曲がきっかけでクラシックにのめり込む。
読書は、ノンフィクション中心に、同じ著者のものをまとめて読む傾向あり。小林秀雄、吉田秀和、カール・ヒルティ、スティーヴン・ジェイ・グールド、内田樹、茂木健一郎など。
仕事はサラリーマン。1995年以来ニューヨーク市郊外在住。

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