2014-10

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アグロー

娘が、ネットで見つけたちょっと面白い話を教えてくれた。

頃は1930年代、アメリカのとある地図制作会社General Drafting Company(以下「ジェネラル社」)の話だ。同社役員のオットー・G・リンドバーグ Otto G. Lindbergとその部下アーネスト・アルパーズ Ernest Alpersは、自分たちが苦労して作った地図が、競合他社によって違法にコピーされ販売されることに苦慮していた。裁判に持ち込んでも、訴えられた方は、「ジェネラル社の地図をコピーしたわけではない。実際の地形や道路や町などを地図にすれば、両社の地図がそっくりになるのは当然だ。」と抗弁して無罪放免になる。困り果てた二人は一計を案じた。同社が制作した地図上のある場所に架空の地名を印刷しておく。他社が無断でその地図をコピーしたときには当然それと知らずにその架空の地名もコピーしてしまう。ジェネラル社は、違法コピーした相手を裁判に訴えて、コピーされた地図にその地名があることを証拠に勝訴する。という寸法だ。

架空の地名を挿入する地図上の場所は、極めて慎重に選ばれたのだろう。あまりに人里離れていても目立ちすぎてばれるし、かといって、あまりに本当の町に近すぎても、変に話題になると自社の地図への信頼性がなくなる。選ばれた場所は、ニューヨーク州の真ん中あたり、山間の村ロスコーRoscoe近くの、田舎道の中ほどの地点だった。架空の町の名は、アグローAgloe。ジェネラル社の上記二人Otto G. LindbergとErnest Alpersのイニシャルを組み合わせたものだ。

アグローが記載されたニューヨーク州の道路地図が出版されてから数年後、ついに「その時」が来た。地図制作会社大手のランド・マクナリー社が出版したニューヨーク州地図に、Agloeの名があるのを、リンドバーグは見つけた。すぐにランド・マクナリー社を提訴、「アグローAgloeが動かぬ証拠だ」。ところが裁判は意外な展開を見せた。ランド・マクナリー社の社員が地図上のAgloeの場所を訪れたところ、そこになんと建物が建っていたのだ。看板には、「アグロー雑貨店」Agloe General Storeとある。店主に訊いたところ、アグローの店名は、エッソ Essoのガソリンスタンドで購入した地図にここがアグローと書いてあったのでそれを使ったまで、という回答。その地図は、もちろんジェネラル社が制作したものだった。なんとアグローという地名が、地図をもとにして出来ていたのだ。ランド・マクナリー社は、「実在の」地名を自社の地図に記載しただけ、と抗弁すれば足り、もちろんジェネラル社は敗訴した。

このような話を聞くと、アメリカだなあ、と思う。自社の地図が違法コピーされて困っている場合、もし、これが日本の会社だったら、裁判でだめなら、行政に苦情を申し立てるか、国会議員に嘆願するかして、著作権法違反の取締を強化してもらう、など、あくまでも「お上」に頼ることで解決しようとするだろう。正確性が命の地図制作会社が、架空の地名を自社の地図に忍び込ませることによって違法コピー問題を解決しようとする、という突飛な発想は、それが上手い解決策かどうかはともかく、日本ではなかなか出てこないだろう。まさに、実用第一、自助努力第一、良くも悪くも、アメリカだなあ。

さらに、雑貨店が一軒あるだけの場所が「地名」を持てる、という点も、また何とも「アメリカ的」だ。日本で同様のことがあった場合、そのアグロー雑貨店が一軒あったからといって、その場所の地名がアグローだとはなりそうもない。日本での地名は、詳しくは知らないがおそらく、地方自治体、国土地理院、総務省など複数の行政機関による、何らかの法的あるいは行政的な手続きを経て初めて決定されるのではないだろうか。少なくとも、地図に書いてあったという理由だけでつけられた雑貨店の看板を根拠に、それが地名だと裁判所が判断するとは考えにくい。上記と同じ裁判が、日本で行われたとしたら、アグローは、実際の「地名」とは正式には認められず、したがって、ランド・マクナリー社による、「『実在の』地名を記載しただけ」という抗弁は根拠を失い、裁判の結果は実際のものと逆になるかもしれない。民間主導で地名が決まってしまう。アメリカだなあ。

その後、アグロー雑貨店は店を閉め、建物は廃墟と化し、アグローという町は消滅した。

時は下って、2014年。今や地図と言えば、グーグルマップGoogle Maps。2014年2月、アグローの話を知ったあるブロガーが、すかさずグーグルマップにAgloeと入力してみた。即座に、赤いピンが、古い地図と全く同じ場所に立った。あのグーグル社もジェネラル社の地図を違法コピーしていた?しかし、さすがにグーグル社は一枚上手だった。別のブロガーが、その1か月後にグーグルマップで同じことをしたところ、もう赤いピンは立たなかった。グーグル社は持ち前の検索力によって、上記2014年2月のブログを検出、自社が、80年前にランド・マクナリー社が提訴されたのと同じ(全く同じ!)裁判に巻き込まれることを回避すべく、Agloeを永遠に葬り去ったようだ。

と、思っていた。ところが、今日2014年10月25日、念のため、グーグルマップにAgloeと入力してみた。なんと、赤いピンが立つではないか!しかも、元の位置から約2キロほど南の地点に。誰かが、このアグローの話をもとに、そこにアグローを再び「作った」?この話題を利用して僻地の山村で村興し?Google社のちょっとしたジョーク?真相は知る由もない。とりあえず、アメリカだなあ。
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Google Play Music All Access

今年6月4日からGoogle Player Music All Accessを利用し始めた。これは、ウェブ上のGoogle Playにアップロードされた全ての音楽ファイルを聴くことができる(ただし、ダウンロードすることはできない)、というサービスだ。クラシック音楽の場合、一つの曲目を様々な演奏家が録音するので、CDの数は膨大なっものになる。試しに、いくつか好きな曲目で検索してみたところ、アクセスできる音楽ファイルの数は、十分に満足いく量だった。世にある数多くの録音を、自分のPCだけでなく、通勤途上や外出先からスマートフォンでも楽しむことができる。クラシック音楽ファンとしては、夢のようなサービスだ。このサービスを利用するための条件は、1.自分のPCに保存してある音楽ファイルをGoogle Playにアップロードすること、2.毎月$9.99のフィーをGoogleに払うこと、の二つだ。

でも、このようなサービスが普及すると、CDの販売高は減り、クラシック音楽業界は、演奏家もCD制作・販売会社も、商売あがったりだ。音楽制作関係業者の多くが倒産し、演奏家たちは収入が減り、その数も減り、演奏水準も落ちてゆく、という懸念がある。

でも、少し考えると、必ずしもそうとも限らないようにも思う。

まず演奏家だが、CDからの印税収入は減るかもしれないが、Google Playerのようなサービスを通じて、クラシック音楽へのアクセスが容易になり、ファン層の拡大につながることが大きい。そうなればコンサートに来る聴衆も増える。クラシック音楽の場合、何と言っても実演で聴ける生の楽器の音色には圧倒的な魅力があり、CDやMP3等の再生音とは異次元のものだ。それに、クラシック音楽好きのすそ野が広がれば、地方のオーケストラなども、地元で熱心に支援してくれるファン層を獲得できるかもしれない。

一方、CD制作・販売会社にとって、ネット上での音楽ソースの公開は大きな脅威に違いなく、当面は、著作権を盾に法廷闘争を繰り広げることになろう。しかし、音楽をCDやDVDなどのデータ・ファイルとして視聴者に届けている以上、音楽ファイルがコピーされることを強制的に食い止めることは無理だと観念するしかないのではないか。MP3プレーヤーで聴くには一旦CD音源をファイル形式にしてPCにコピーすることが必要不可欠ですらある。PCとインターネットの普及で、音楽産業のビジネス環境が変化したことを、音楽業界は受け入れるしかない。著作権関連法規も、社会環境の変化に合わせて改訂される必要もあるかもしれない。

そのような新しい環境の中でCDを売ろうと思えば、それを単なる音楽媒体としてではなく、「モノ」しての魅力を高める必要がある。音楽を聴く満足に加えて、デザインや解説内容などを充実させて、商品としても魅力を高めるという、当たり前の経営努力を続けるしかない。

そもそも、Google Playerのようなビジネスモデルに対応できるように、自分たちのビジネスのやり方も変えていくことも、環境変化に即応するというこれまた当たり前の経営努力の一環として、取り組んでいかなければならない。
こういった経営努力に取り組む意思のある企業にとっては、Google Player等によるクラシック音楽ファン層の拡大がもたらす恩恵は大きい。なんと言っても、潜在的な顧客が増えることは望ましいことだし、意外と、CDの売り上げそのものも減らないのかもしれない。

Google Playerのように利用者=音楽ファンにとってありがたいサービスの出現は、短期的には既得権益を損なう者は出るものの、長い目で見れば音楽に携わる関係者全員のメリットになるものと確信している。

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プロフィール

内之助

Author:内之助
マラソンは、2008年12月のホノルル・マラソンをもって、全米全州(50州+DC)でフル・マラソンを夫婦で完走。今は、トレイルでのウルトラ・マラソンを楽しんでいる。
音楽は、中学校1年生の時に、FMで偶然耳にしたモーツァルトの喜遊曲がきっかけでクラシックにのめり込む。
読書は、ノンフィクション中心に、同じ著者のものをまとめて読む傾向あり。小林秀雄、吉田秀和、カール・ヒルティ、スティーヴン・ジェイ・グールド、内田樹、茂木健一郎など。
仕事はサラリーマン。1995年以来ニューヨーク市郊外在住。

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