2017-10

34年ぶりの再会

 34年前、中学1年生になったばかりの頃だったと思う。ある朝、親に買ってもらったばかりのソニー製ラジカセでNHK-FM放送を何気なく聴いていたときに、たまたま流れたある曲が鋭く琴線に触れた。これが、僕がクラシック音楽を聴き始めるきっかけとなった瞬間だ。管楽による、ファンファーレを想わせる和音4打のあと、弦楽が、舞い上がるようなさわやかで快活な旋律を奏でる。今まで聴いたことのないような美しい音に、忽ちのうちに未了された。繰り返し聴いたはずなので、この時たまたまカセット・テープに録音したのだろう。

 以来、ずっと、この曲が頭から離れず、レコードやCDを探し続けてきた。曲目のアナウンスを録音し忘れたのだろう。モーツァルトのディヴェルティメント変ホ長調か変ロ長調、演奏はウィーン八重奏団、という記憶だけが残っていた。これだけ判っていれば見つかりそうなものだけれど、図書館を利用してモーツァルトのディヴェルティメントを手当たり次第聴いてみたり、クラシックCDの分厚いカタログや案内書を調べたりしたが、なかなか見つからなかった。

 それが何と、先週、ニューヨークの中古レコード店で見つけたそれらしいレコードを、だめで元々くらいの気持ちで購入したところ、まさに、その曲だった。モーツァルトのディヴェルティメント第一番変ホ長調K. 113(米London STS 15053)。モーツァルト15歳の時の作品で、弦楽4部とクラリネットとホルンがそれぞれ2本の計8人で演奏され、全4楽章を合わせても演奏時間12分足らずの小品だ。演奏も、34年前に聴いたのと同じウィーン八重奏団によるものだ。ウィーン・フィル往年の名コンサートマスター、ウィリー・ボスコフスキーが第一ヴァイオリンを勤める。

 34年ぶりに聴いた。が、意外なことに、記憶の中で鳴っていたこの曲の方が、実際にレコードから再生された音楽よりも美しかった。長年の間に頭の中で少しずつ美化されていたのかもれない。初めて聴いた時のような感激もなかった。しかし、それでよいのだと思う。長い間記憶の中だけにあった音楽に34年ぶりに再会できたということ、それ自体が、何ものにも代えがたい貴重で感動的な体験なのだから。
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コメント

34年ぶりの再会

本当に久々の書き込みにもかかわらず、ご訪問いただき感謝です。
そうですね、これから秋に入って、じっくりと音楽を聴くのに適した季節になりますね。
これからも、よい曲・演奏に出会った時にはまた書いてみたいと思っています。

34年ぶりの再会

久しぶりにHPにお邪魔しました。その後お元気ですか。
モーツアルトを聴いてクラシックに目覚めたなんて素敵です。美しいメロディーが時の流れと共に熟成されて、34年ぶりに再会とはおめでとうございます!!
ボスコフスキーといえば、私はウインナー・ワルツを演奏、指揮しているCDを持っていますが、実に優雅です。

中古レコード屋さんに「宝物」がじっと誰かの手に渡るのを待っていたのですね。

秋のシーズンが今年も到来、美しい音楽に耳を傾けるひと時は何物にも代え難いです。

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内之助

Author:内之助
マラソンは、2008年12月のホノルル・マラソンをもって、全米全州(50州+DC)でフル・マラソンを夫婦で完走。その後、トレイルでのウルトラ・マラソンを経て、今はタイムを気にしなくても良い登山やハイキングを楽しんでいる。
音楽は、中学校1年生の時に、FMで偶然耳にしたモーツァルトの喜遊曲がきっかけでクラシックにのめり込む。
読書は、ノンフィクション中心に、同じ著者のものをまとめて読む傾向あり。小林秀雄、吉田秀和、カール・ヒルティ、スティーヴン・ジェイ・グールド、内田樹、茂木健一郎など。
仕事はサラリーマン。1995年以来ニューヨーク市郊外在住。

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